芸術的なカレシ





何だろう。
この、胸のざわめき。

ドキドキしているような、ワクワクしているような。
ソワソワにも似た、何かに急かされるようなこの気持ち。


和太鼓のリズムに、ノイズに近いような器械音が混じってくる。

……器械音?
違う、エレキギターだ。


キィーーーン、ギュワワワワ


和太鼓とエレキギター。
すごい組み合わせ。
エレキギターの音は、限りなくノイズに近い。

……不思議な音楽。
とても衝動的だけれど、物凄く計算されているようでもある。

ギターの音はあちこちに飛んでいる。
飛んでいる、と言うよりは、飛ばされている感じ。
飛ばされて、戻る。
戻ってきて、また予期しないところに飛ばされる。

……凄い。
初めて聞く種類の音だ。


その音の波に乗って、拓とカツオくんの腕が世話しなく動く。
時に細かく、時に大胆に。
長い腕が、まるでそれだけで存在しているかのように。
水を含ませた刷毛や布でパネルを擦っていく。
乾きかけた絵の具が溶け、剥ぎ取られ、その軌跡が露になる。
すると赤と黒の下から、あのジャクソンポロックがじわじわと浮き出てくる。

耳で感じる音、そのままに二人の体は反応して、まるで踊るようにパネルの上を移動する。
自由に。
何にも縛られることがなく。


すると、暫くして、赤と黒が徐々にただの赤と黒ではなくなっていく。

REBORN
生まれ変わる。

『REBORN R&B』



「……すごい」


私は思わず、そう呟いていた。













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