芸術的なカレシ







「あのエレキギター、弾ける人探すの、苦労したんです」



紅は隣で、安心したような表情で頬杖をついている。



「どれもこれも、イメージに合わなくって。
四人目ですよ?
四人目で、やっと、わたしのイメージに合う音を出してくれる人、見つけたんです」



へー……四人目ねえ、って。
え?



「なかなか良かったですね。
二人とのコラボは一発勝負だったから、すっごいドキドキしました。
音も悪くなかったですね。
リハ、何回もやっといてよかったー」



「え?」



「あ、ミズキさん、もしかして聞いてなかったですか?
あの音楽、わたしが、作ったんですよ
かっこよかったでしょ?」



「……」



あ、そうなの。
めちゃくちゃかっこよかったけど、絶対に言いたくないな。



「タクシさんと、毎日遅くまで、イメージ合わせ、頑張ってたんですよー。
タクシさんの部屋にパソコン持ち込んで」



あ、そう。



「でも、いつだったかな。
帰り際、タクシさんに、チュッてしたら。
次の日から、タクシさんの部屋、出入り禁止になっちゃいました」



帰り際に、チュ……?



「ハレンチなこと、するなー!って、次の日、怒られましたよ。
ハレンチって何ですか?
ミズキさん、わかります?」



破廉恥って、そりゃあ、恥知らずってことで……

え?



「女の子にキスされて、怒るなんて。
変ですよね?」



変です、よ、ね?


















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