芸術的なカレシ
結局?
次の作品は、サンドアートだった。
今、テレビや何かでもよく見かける、所謂、砂絵。
緩やかなピアノ曲が流れて。
大きなスクリーンに、次々と砂の絵が浮かび上がってくる。
器用に動く指。
指から漏れる砂が、人の形や動物の形になる。
私はそのサンドアートをぼんやりと見詰めながら、ほぼ放心状態だった。
……私は、何で拓と別れたんだっけ?
もはや、よく分からない。
拓と紅は、何でもなかったようだ。
キスはしたみたいだけど、紅が言うには一方的だったらしいし。
なら、どうして。
どうして別れなければならなかったんだろう?
「……なんで? 」
声に出してみても、やっぱり分からない。
「……バカみたいじゃない?」
ほんと、バカみたい。
一人で勘違いして、一人で空回りして、色んな人を振り回した。
いっぱい泣いて。
切なくて苦しくて。
母親を頼って。
明日香に背中を押してもらって。
見合いまでして?
だからこそ、こうくんにも出会えたのだけど。
いっぱいいっぱい迷惑をかけた。
心配もかけた。
「バカみたいだわ……」
呟けば呟くほど、滑稽さに笑えてくる。