芸術的なカレシ





「べに」のことは、もう忘れよう。
今日は久しぶりのデートなのだ。
ムカつくけど、楽しまなきゃ。
とは思うけれど、忘れたふりをするのは簡単でも、本当に忘れることは難しい。
拓のスマホが鳴る度に、私は「べに」を思い出す。


午前中は二人で街をブラブラした。
帽子がほしいなー、あ、ダウンもー、とか色々適当なことを言いながら何だかんだで、楽しい。
居心地がいいのだ。
お互いがお互いの癖をちゃんと知っている。
どこかではぐれても、ドキドキすることもない。
めぼしい居場所は見当がつくし、ラインで連絡を取り合えばいい。
ツー、カー、ならぬ、あー、おー、の関係だ。


牛丼屋で昼食を食べ、拓が画材を見に行きたいと言うので大手の量販店に向かった。
ここは画材用品はもちろん、ちょっとお洒落なインテリアや雑貨、家電、アイデア商品なんかも売っている。

いつもは私もここに来ると、拓と離れて化粧品や雑貨などを見に行く。
けれど今日は、何故だか画材売り場へと一緒に付いて来た。
特に理由があるわけではなかったけれど、拓がいつもどんな買い物をしているのか、見てみたくなったのかもしれない。






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