芸術的なカレシ
本気?
私と拓と、カツオくんと、紅。
イタリアンメニューもある、お洒落なオープンカフェに入る。
天気もいいし、外で食べましょーと、カツオくんの提案で、ワケワカメな私達は通りに面した丸テーブルを囲んだ。
私と拓はホットコーヒーを。
カツオくんはツナとほうれん草の和風パスタを。
紅は、サーモンとトマトのクリームパスタを。
会話もあまり弾まずに、無言のまま口に運ぶ。
「瑞季さん、て、お仕事、何されてるんですかあ?」
お冷やで口直しをしながら、口を開いたのは、紅。
上目遣いで私を見る仕草は、計算しているのかいないのかはわからないけれど、女の私から見ても溜め息が出るくらい可愛い。
瞼が開いたり閉じたりする、赤ちゃんのお人形みたいだ。
「あー、うん、小さい工場のね、事務」
「ジム……って、何するんですか?」
「うーん、何って、ナニってこともないけど……」
聞いてどうするんだろ。
つまらないと思うのだけど。
面倒だからさっさと切り上げようと会話を濁すと、
「まあ、適当におっさんの機嫌とったり、お茶いれたりだわなあ」
拓がふざけてそんなことを言う。
おっさんの機嫌とり?
まさか私の仕事って、そんなことだと思ってるの?
「ひっど、それだけじゃないけど」
「大変なんですねー」
私の突っ込みに、セリフ棒読みの紅。
なんか、バカにされたみたいでムカつくんですけど。