芸術的なカレシ
……だったらどうする?
だったらどうするの? 私。
自信ある?
10年のキャリア、盾になる?
コーヒーを口に運びながら、拓を盗み見る。
バカだなーお前ーとか言ってカツオくんとじゃれあってる。
能天気な顔。
けれど、読めない。
本当はどう思ってる?
この際、若いのに乗り換えようかなーとか、考えてる?
でも、飯が食えなくなるのは困るなーとか?
考えれば考えるほど、わからなくなる。
私は、拓にとって必要?
離れたくない?
手放したくない?
結婚しようとか、思わないの?
決して口には出せない問いが、ぐるぐるぐるぐる。
コーヒーの黒に混ざって、溶けて、私は冷えかかったそれを飲み干す。
ああ、考えることが面倒だ。
面倒なことは嫌いなのだ。
グズグズした自分も。
結局は信じるしかない。
拓を。
拓と私が積み上げてきた10年を。