芸術的なカレシ
あの頃、拓に片想いしていた、カオリ。
大学4年の秋、拓にちょっかい出してきたヨーコ。
5年前、拓の携帯にスケベなメールを送り付けてきてたナナ。
その次の年、自宅に拓を呼びつけ、色仕掛けで拓に襲わせようとした(らしい)塾講師の女。
2年前、拓をつけ回し、ストーカーまがいの行動で警察沙汰にまでなった米山由加。
今までありがとう。
そして……
ザマーミロ!!!
私は拓のものになります。
そうして拓は、私のものになります。
ありがとう、みんな。
本当にありがとう。
「おいで、瑞希」
歪む視界の中で、私を抱き寄せようとする、拓の腕。
見た目より力強いんだ。
けれど、華奢な私の体を、優しく包んでくれるんだから。
「拓……」
パアアアアッ
拓の背後に、少女漫画のような真っ赤な薔薇が見える。
あれってば、本当だったのね。
こんなにも心を動かす感動には、幻覚がつきものなんだわ。
「んん……、ん……」
拓の腕の肌触り。
逞しくて、骨太で、ちょっと乾燥していて、ガサガサして。
……ガサガサ??
え?
ガサガサ?