芸術的なカレシ






しばらく明日香と二人でワインを飲んでから、レストランの出入口で別れた。


私はお酒は強い方だと自負しているけれど、それでも今日は酔っている気がする。
足元がふらふらして、おぼつかない。
頭がぐらんぐらんしている。
……飲みすぎた。


今日は土曜日。
都会の街は賑やか。

カップルに、女子会。
バカ騒ぎする男達。
ナンパに喧嘩。
みんな週末を楽しんでいる。


いやだなあ。
こんな所で、一人ぼっち。
明日香は、タクシーよぼうか?って言ってくれたけど、安月給の私にはもったいない。

あああ。
こんな時、拓に連絡をすれば迎えに来てくれるのに。
駅前のファーストフードで、セットを奢らされて、それから自転車を二人乗りして帰るんだ。
家に付いたらお茶漬けを作って、二人で食べるの。
梅干しを2つ入れて。

いつだったかなあ。
私がどこかで明日香と飲み過ぎて、拓に迎えに来てもらったのはいいけど、最終逃しちゃって。
4時間かけて、歩いて帰ったことがあった。
途中で何度もコンビニに寄って。
クイズを出し合ったり、しりとりを始めたりして。
それで二人でくったくたになって帰ってきたのに、変なテンションで。
気持ちが昂ってて、そのまんま、リビングのソファーでしたんだった。
母親が起きてこないか凄くドキドキして。
またそのドキドキが、スッゴクよくて。
何回も何回もイッて。
スッゴクスッゴクよくて……

何でだろう。
今までずっと忘れてたのに。
こんな時に思い出すなんて。
こんな時だから思い出すのか。


ああ。
拓に会いたい。

会いたくて会いたくて。
泣きそうだ。











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