芸術的なカレシ





拓と離れてから、自分が比較的周りに流されやすいタイプだったのだと、改めて感じている。

拓の強引さに慣れていたのか、元々自分の意見を主張するのが苦手な気質だったのか。
自分のことながらよく分からないのだけれど。
お見合いのことにしたって、拓にはあんなことを言ってしまいながら、グズグズ悩んで。
けれど結局、こうして会ってみることになってしまった。
もちろん向こうは仕事で来るのだけれど、周りはそうさせないらしい。


完全に、事務所で嶋田くんとお見合いムード。

社員の鈴木さんや山本さんまで、瑞季ちゃん、頑張れよお、なんてウキウキし出している。
全然関係ないのに。

母親まで来そうな勢いだ。
今日は遅番だから、さすがに仕事休んでまでは来ないだろうけど。



「さあ、そろそろね」



コピー機を直してもらうだけなのに、ユリエさんの化粧は朝よりも凄いことになっていた。
いやいやいや、気合いの入れすぎはよくなかったのでは?と、突っ込み所満載だけれど、もちろん黙っておく。

私はまだ伝票の打ち込みが残っていて、約束の時間になっても呑気にパソコンの前に座っていた。
案の定、ユリエさんが近寄ってきて、また化粧直しを勧められる。


何だかもう、よくわからない。
できればもう、放っておいてほしい。









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