芸術的なカレシ






二人とも映画は大好きだったけど、拓とは映画の趣味がとことん合わなかった。


拓はアクションものやSFが好きで、ドーンとかガシャーンとかいうシーンになると、アメリカ人ばりに、おー、とか、ウホホーとか、変な奇声を上げた。
私はいつも、隣の視線が気になってしょうがなかったな。
笑い声も人一倍デカかったし。


私は映画を観た後に、食事やお茶をしながら、あそこがこうだとかどうだとか、わたしならこうしたのにこう言ったのにと、語るのが好きだったけれど、拓はそれを聞きながらうんざりした顔をしていた。


『映画は観てる時に楽しめばいーじゃん。
後からどうこう言う奴って、ホントめんどくせえ』

それが拓の言い分で、私もいつからか、映画の後にどうこうと語るのをやめた。
聞いてくれる人がいなければ、語ってもつまらないし。


原作との読み比べも好きだった。
特に邦画は、原作が小説であれば必ずと言っていいほど読んだ。
拓はそれについても不可解だという顔をしたけれど。


本当に、とことん。
映画についてはいつも意見が食い違ったものだ。
映画館で喧嘩をしたことも何度かある。

今日は何を観るか、いつもだいたいじゃんけんで決めた。














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