芸術的なカレシ
「映画の約束はいつなの?」
「24日」
「クリスマスイブ!?」
「うん、日曜だし」
「あらまあ……
クリスマスイブを一緒に過ごすなんて、もう恋人同士みたいね」
「そう?」
拓と過ごした10回のクリスマス。
クリスマス気分で盛り上がったのは、多分、最初の3回くらいだった。
母親がショップ店員という仕事柄、我が家はクリスマスになるとそれなりに飾り付けが出来上がるけれど、私と拓はクリスマスなんて無頓着で。
クリスマスは恋人同士のためにある、なんて世間では言われるけれど、何年も一緒にいればそんなに大きなイベントでもなくなる。
元々、私も拓も記念日には疎かったし、誕生日ですらプレゼントなんてほとんどあげたこともなければ貰ったこともなくて。
やっぱりそれも、最初の3年くらいはあったかな。
何をあげたら喜ぶだろうなんて、健気に考えたこともあった。
付き合いが長くても、家族になって子供でもいれば違うのかもしれないけど。
サンタクロースの真似事をしたり、大きなチキンを焼いたりするのだ、きっと。
だから嶋田くんに、せっかくなのでクリスマスにでも、と映画の日にちを指定された時も、そんなに意識することなくOKした。
ああ、そうよね、ちょうど日曜日だし、くらいで。
けれどもしかしたら、ちょっと特別な意味があったのかなあ、なんて、今頃考えてみる。