芸術的なカレシ
「そりゃああんた、クリスマスの雰囲気で、あわよくばやっちゃおうって魂胆でしょ」
そう言ったスマホ越しの明日香の声は、どこか怒りに満ちていた。
「てか、私に相談なしに見合いするなんて、なんかムカつく」
そんなことを言うあなたこそ、相談なしに結婚決めちゃったでしょう、と相変わらず
声にならない突っ込みをする。
「しょうがないじゃん。
成り行きでさあ……」
「成り行きで別れて成り行きでお見合いって、あんたの意志はどこにあるのよ?」
「う……」
親友の指摘は厳しい。
モツ鍋のシメで卵雑炊を食べていると、私のスマホに明日香から着信があった。
なんてタイミングだろう、と思いつつ、私は嶋田くんとのお見合いのことを報告したのだ。
てか、見合いでもしたらって言ったのは明日香だし。
「あ、そうそう。
私が電話したのは、あんたの下らない見合い話を聞くためじゃないのよ」
「……下らなくはないでしょう」
「成り行きの見合いなんて下らないでしょう。
それより、私とフレディの結婚パーティー、新年明けて、一月の末に予定してるんだけど、来てくれる?」
「結婚パーティー?
もちろん。
式はしないの?」
「うーん、まあ、色々問題があってね。
向こうの両親とは絶縁状態だし。
質素なパーティーにしようと思ってるのよ」
質素なパーティー?
あの明日香に限ってそれはないでしょう。
豪華なドレスを着るに決まってる。
料理だって豪華なはずだ。
ああ、困ったな、何着ていこう。