芸術的なカレシ






「拓史も呼んであるから」



「はっ!?」



最も聞きたくない名前が、スマホから飛び出してくる。



「最初から呼ぶつもりだったし。
あんた達が別れたにしても、私には関係ないし」


「そうだけど……」



そこは親友として気を使ってくれてもいいところでは……



「メールで確認したけど、拓史はOKだって。
あんたが気にしてるほど、向こうは気にしてないのかもね」



「……」



サッパリとした明日香の言い種。
そんな風に言われると泣きたくなってくるんですけど。



「まあ、それは冗談だけど。
大丈夫よ、この前のレストランで、立食パーティーにする予定だから。
大学の子も数人呼んであるから、拓史と絡みたくなければ十分避けられる。
フレディの友達もいっぱい来るしね。
何なら紹介させようか?
みんなゲイばっかりじゃないわよ」



何人居ようと、何十人居ようと、何百人だろうと。
拓と同じ空間に平然と居て物を食べたり飲んだりするなんて、想像しただけで背中がゾワゾワする。

完全に避けるなんてできるものか。
大学の友達だって、みんな私達とのことは知っているのだし、冷やかされるに決まってる。
かと言って、別れたことでみんなに気を使わせるのも面倒だ。

……ああ、行きたくない。



「来てくれるわよね?」


私の思考回路が読めたのか、明日香は威圧的だ。



「……う……」


「親友の結婚パーティーよ?」


そう。
主役は明日香とフレディなのだ。
私と拓史が別れたことは、関係ない。



「……はい」


「よし」



けれど、心底、憂鬱だ。

何ならその日までに。
地球が終わってしまえばいいのに。












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