芸術的なカレシ
結婚?
「……で、相変わらずなわけだ、拓史も、あんたも」
その日、私は親友の明日香と駅前のカフェで待ち合わせていた。
明日香は先日アメリカから帰国したばかりで、私達が会うのは実に1年ぶり。
このカフェは大学時代からよく二人で(時には拓と三人で)通っていて、メニューが豊富なのにどれも平均以上に美味しいところが、気に入っている。
外装も内装も、インテリアもさっぱりしていて、癖がないところがまたいい。
「うん、ごめんね。
拓、今日は一緒に、ここに連れてくる予定だったんだけど……」
「ああ、わかってる、わかってる。
どうせ下らないけど譲れない、芸術家の用事でしょ」
そう言って笑う明日香は、少し太ったみたい。
やっぱりアメリカンな食事は人を太らせるのかしら。
まじまじと明日香の顔を眺めていると、
「瑞季、痩せたね 。
てか、やつれた?」
「ぶっ」
親友のキツい一言に、思わずコーヒーを吹きそうになる。
「苦労してるのね、あんたも。
結婚はまだなの?」
「ぶっっ」
さすが親友。
私と拓の両方を知っているから、遠慮がない。
「結婚、したいよ、私も」
つい、本音が出てしまう。