恋するイフリート
こんな興奮は子供の時以来だ。
人というのは【やってはいけない】というルールを犯すとき
最も興奮するものなのだ。
興奮の余り鼻息が荒くなる…。
心臓はバクバク脈打ち
コーランへ差し伸ばす手は
ブルブル震える……。
『ほんの少し……少しだけっ…!』
葵の指先がコーランに触れた。
『いっちゃえっ!!』
一気に手元に引き寄せ
そのままの勢いで…
……コーランの最初のページをめくった……。
興奮の余り葵から気持ちの悪い
歓声が漏れる。
『むっふぅ〜〜〜っっ♡♡』
――その時――
「カッッッ!!!」
「えっ!!??」
瞼に強い衝撃を感じて葵の動きが止まる。
……今……一瞬稲光が走ったような??
気のせい??
「???」
瞼に気持ち悪さを感じてゴシゴシとこすってみる。
そして、もう一度辺りを見回してみた。
辺りは今までと変わらない。
キッチンから漏れる頼りない明かりだけだ。
『……気のせいか…。』
気を取り直し再びコーランに視線を移した時……
「何をしている?小娘」
「!!!」
葵のすぐ背後から男の声がする。
全身の毛穴からドッと汗が吹き出した。