恋するイフリート
「こ…これはっ!!そのっ!!」
『ヤバイっ!勝手に見ようとしてたのがバレたっ!?』
どんな言い訳をすればいいのか解らず、
すぐには後ろを振り向けない。
「何をしているのかと聞いている」
その声は心なしか怒りを含んでいるようにも聞こえる……。
「あう…あう…」
『もうダメだっ!!素直に謝ろうっ!!』
そう思い、ひと思いに後ろを振り返った。
「申し訳ございませんでしたあああっ!!……あ???」
「……」
言葉を失う葵に男は平然と問い返した。
「どうした?」
「…え…?…あ…の…あ…れ…??」
てっきり、背後の男はアシュラフかと思っていた。
が……
そこには見知らぬ男が居て
葵の手の内にあるコーランをしげしげと覗き込んでいた。
「……あんたっ…誰っ!?」
思わず叫んだ葵。
「…!?」
何かに気付いた男も叫んだ!
「お前が持ってる物はっ!?」
「………っ!!!」
お互いを指差して絶句……。
「ぎゃーーーーっ!!」
「わぁあああーーーっ!!」
真夜中の静かなリビングに
見知らぬ男と葵の叫び声が同時に響いた。