恋するイフリート
美里がリビングの入り口に立っている。
「葵ちゃん、どしたのー?」
それに続いてアシュラフも片言の日本語を操りながら姿を現した。
そして、
二人の視線が見知らぬ男を捕らえる。
「葵ちゃん……。その男性は誰?」
夜中に見知らぬ男の訪問とあっては
さすがの美里も怒るだろうと思われた……
「葵ちゃんっ!!」
「はいィィィーーっ!!」
美里の大声に自然と身体が氷つく。
「あ…あたしも、知らないよっ!
いつの間にかここに居たんだよっ!!」
決して嘘は言ってない。
嘘みたいな話だが全部本当の事だ。
「………彼……
イーィ男じゃなぁ~い♡」
「はっ!?」
葵は予想外の返答に我が耳を疑った。
確かに…
この男、明るい所でよく見てみると
美里が言うように、ズバ抜けて美しい。
日本人離れした、形の整った堀の深い顔に、少しつり目のアーモンド型の瞳。
真っ黒な瞳と、襟足まで伸びる真っ黒な髪が褐色の肌に良く映えている。
それともう一つ。
この男、アシュラフと遠からずとも近い人種であろう事が伺える。
理由はそのズバ抜けた美貌からだけではなく、
この男が着ているものが明らかにおかしいからだ。
ダボダボのハーレムパンツに、
上半身は裸……。
左耳と右足には見事な細工のピアスとアンクレット…。
例えるならば…ディ○ニーから飛び出てきた
アラジンのようだ……。
どう見てもまともでは無い事が伺える…。
美里は男に近づき、頭のてっぺんからつま先まで
じっくり眺めて訪ねた。
「うふ♡あなた、お名前は?」
「俺は、イフリートのドゥル=ジャラール・ワル=イクラーム。
皆はイフリートと呼んでいるが、好きに呼んでくれてかまわない」
…アラブ人の名前は皆、長い…。
「イフリート…??」
その名を聞いたアシュラフが怪訝な表情を浮かべる…。