clover's mind
 あまりにも簡潔であり、また淡々とした言葉。

 俺は一瞬その言葉の意味を理解できず──いや、本能で理解しようとすることを瞬時に拒絶したのかもしれない。

 そう。



 それは、俺にとって死刑宣告にも等しいひと言だった。



 マスターは決してミスそのものを理由に怒りはしない。

 なぜなら、人は人である以上いつか必ずミスをしてしまうものだと常日頃いっているからだ。

 だからどれほど重大なミスであろうと頭ごなしに責めるようなことはしない。

 けれどもきちんと責任はとらせる。

 そのミスに応じた形で、だ。

 なぜならマスターはその人間に出来ないことをさせようとは絶対にしないからであり、それはつまりその人間に背負える大きさの責任であるからなんだ。

 手放しに信頼できる他人なんてどこにもいやしない。

 ましてや接客業であり、飲食業。

 怠慢な営業は即、首を絞めることになってしまう。

 だから無理な仕事は絶対にさせない。


< 155 / 203 >

この作品をシェア

pagetop