clover's mind
 加えてその仕事を、責任を背負わせるとき、必ずマスターは相手に確認をとる。

「できるか?」

 と。

 そこで相手が「できる」といわないかぎり、決してその仕事を任せることはしない。

 背負う覚悟のない人間はどこかでその責任をないがしろにして手を抜くからだ。

 そんな人間にいかなる仕事も任せることはしない。

 ミスというものは“自分に任されているという自覚と誇り”の深さによってその頻度(ひんど)が変わってくるものだ。

 初めてカフェ・オレを任されたときにマスターにいわれたことがある。

「この店で一番やって欲しくないことは、な。“見栄を張る”ことだ」

 やりたい仕事ややりたくない仕事というものは誰にでもある。

 けれども“適材適所”という言葉がある。

 ここが少々の苦情なんてビクともしない店だったり、人数に余裕のある店であるならばそれぞれが好き勝手にすればいい。

 しかしそうじゃぁない。

 ここはそれぞれが“責任と誇り”を持っていなければ成り立っていかない場所なのだ。

 そしてそれがこの店のモットーであり、マスターのポリシーでもあるんだ。

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