clover's mind
 なるほど、それで、か。

 そのときのまゆみが何を考えてそんなことしてたのかはわからないが、以前にそういう話があがってたのか。

 それで俺の名前も知ってたってことか。

 ん?

 でもうちのバイトは俺だけじゃないはずだけどなぁ。

“たまたま”家で俺の名前しかあがってなかったのだろうか?

 まぁいいか。

 それはそれとしておいて。

「それで?」

 とりあえず俺とまゆみの両者がお互いの携帯の番号を知らないことはわかった。

 でもそれがわかったからといってどうというわけでもない。

 それよりも今は陽が落ちる前に彼女を探しにいく方が先決だ。

 こうしている内にも段々と太陽は赤みを帯びていく。

「ごめんなさい。とりあえずボクは彼女を探しに──」

「いいからちょっとまちなさい!」

「は、はい?」

 再び愛車にまたがる俺をぴしゃり、と一声で固まらせるお母様。

 こ、これ以上まだなにがあるというのだろう?

 本当にもう早くまゆみを探しにいきたいのだけれども……。

「? お母、様?」

 おもむろにお母様が取り出したのはご自身の携帯電話だった。

 そして慣れた感じでカコカコ、とボタンを押していく。

「あ、あの、何を? さっきお母様がお話されたようにボクはまゆみさんの番号を聞く気は……」

 慌てて愛車を降りて止めようとする俺。

 と、お母様は──
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