clover's mind
『もぅ~。電波が悪いのかなぁ?』

 っと、こりゃいかん。

『ママ~? 一度切るわよ~?』

 このまま魂をアチラ側に預けておくわけにゃいかない。

『ほんとに切っちゃうね~?』

「も、もしもし?」

『え?』

「あの……俺、だけど……」

『……』



──沈黙。



 突然のことに驚いているのだろうか、言葉をひと言も発さずに携帯の向こうで無言を続けるまゆみ。

 かくいう俺も、ほぼ勢いで電話を代わったためになにをどう切り出せばよいのかわからず同じように無言になってしまっていた。

 二人の間にある音といえば、振動で伝わるんじゃないだろうかと思えるほどの心臓の音と、向こう側から聞こえる子供たちの甲高いかけ声。

 それがなんとも奇妙で、まるでこの電話の向こう側は別の空間につながっているんじゃないだろうかと、そんな馬鹿げたことを思い浮かべてしまう。

 と、かすかに聞こえる金属音がなんだろうかと耳をすませていると──



 プッ プ、ツーツーツー



「あ!?」

 なんの前触れもなく、通話が途切れた。

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