clover's mind
 ミルクを取り出す。

 深呼吸を一つ。

 精神集中。

 落ち着いて、ゆっくりとミルクを注ぐ。

 するとミルクは珈琲とまざることなく黒の水柱の上に白の水柱を形成していく。

 黒7にたいして白3くらいの比率。

 完璧だ。

 珈琲とミルクの境目でかすかに身もだえするようにして白線が踊る、芸術とも呼べる一品のできあがりだ。

「はい、カフェ・オレあがりです」

「はいよ」

 マスターが慎重にグラスをトレーにのせて客席に運ぶ。

 運ぶのもまた熟練した技術が必要だ。

 まともな人間なら素人にカフェ・オレを運ばせるなんてことはしない。

 あの見た目がカフェ・オレの醍醐味だからだ。
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