clover's mind
 なんていったところで火にガソリン(ハイオク)をブチこむようなもんだろう。

 かといってこのまま帰るにはあまりにも、もったいなさ過ぎる。

「歯医者は、いったのか?」

 とりあえず会話の選択肢はこれしかないわけだが……うぅん、手すりのない一本橋渡るよりか恐ろしいな。

「ついさっきいってきたばかり。腫れはまだひかないのよ」

「下の歯?」

 俺の質問に頷く彼女。

 おやしらずは上を抜くのと下を抜くのとで、月といそぎんちゃく並に痛みの差があるそうだ。

 幸い俺は体験したことがないが、彼女の様を見りゃそれが正しいって嫌でもわかる。

 痛み止めを打つか飲むかしてるんだろうが、それだって痛みをまるっきりなくせるわけじゃないようだな。

 への字の口がそれを物語っている。
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