clover's mind
 いつだったか俺がアイス珈琲用のストックを作っていたときだ。

 豆を挽いてるとこんなことをいってきた。

「ねぇねぇ、珈琲ってさ、子供の頃泥水だと思ってなかった?」

「はぁ?」

 思わず俺は床に豆をぶちまけて聞き返し、彼女の言葉を耳にした客は口に含んでいた珈琲をいきおいよく吹き出したよ。

 どれだけ子供だろうと誰が好きこのんで泥水を飲みたがるかなんてわからないはずもない。

 象が自慢の鼻をちょうちょ結びにしてコサックダンスを踊るくらいありえない話だ。

 それでも彼女は本気でそう思っていたらしい。

 そりゃ苦くて飲めないという人もいるだろうが、だからといって泥水なわけがない。

 そもそも泥水が苦いかどうかすらもわからない。

 そして──これが泥水だとすりゃ、専門店で買う余裕がないからって近場のスーパーで安くてうまい豆はどちらだろう? と一時間以上悩む必要がない。

 天然というよりは天然記念物だね。

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