Faith
第一章
二人
五月に入ったばかりでまだ梅雨も来ていないのに、最近は夏の到来を予感させるような暑さだ。やっと先日、中間服の移更期間となったばかりであるが
『夏服に移更!』
という批判や
『クーラーつけて!』
という批判が飛び交っている。当然、五月という時期にクーラーの電源を学校側はつけてはくれない。入口付近の柱の上部に設置されてる二台の扇風機が頑張っているのだが、そよ風程度にしか感じられない。皆はこの暑さから少しでも逃れようと下敷きであおいでいる。だが浜園由奈という女はぼーっと外を見ていた。下敷きはノートに挟まれたままのようだ。
由奈は東京にある西陲高校に通う高校三年生である。学校と家は近く、徒歩十分でつく。
肩に付くか付かないかという長さの髪は少し茶色がかっていて、大きい目はどっかクールな雰囲気も感じとれる。鼻筋は通っており、声は高すぎず低すぎずという感じだ。
男女関係なく皆なと仲が良く、皆なから信頼されている。理由は、曲がったことが嫌いで自分の考えをしっかりと持った女の子であったからだ。
そんな由奈には大親友がいた。それは今まさに、少し筋肉質の左腕を机に肘で立てて顔を手の平で支えて寝ている、由奈の右斜めの座席の村山涼太という男だ。
涼太はワックスで毎朝早く起床して髪型をセットしてくるほどオシャレに気をつけている。ナルシストなのかと思うかもしれないが実際は違う。自分のことなんて大嫌いな奴である。
しかし親友の由奈に伸びるに伸びた髪を見て一度こう言われたことがきっかけでオシャレするようになったのである。
『何万何千年前の時代からお越し頂いたのですか?』
それ以来髪はばっさりと切り、ブリーチをして明るい金髪に染めた。ワックスでトップを軽く立て、後はほんの軽くサイドを外ハネさせる。それがまた可愛い顔をした涼太には似合うのであった。肌も綺麗で目もパッチリしているので、全く女の子から話しかけられることなかった以前とは異なり、涼太に好意を寄せる女子が増えていったのである。
しかし誰も告白はしない。
それは由奈と涼太が付き合っていると思っているからである。
しかし二人は付き合っていない。互いに凄く大切な存在であるのには変わりないのだが、二人にとっては普通に友達なのである。そう、二人はとても大切な親友という関係であった。