チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「あの…っ!」
出口の所でようやく追い付く。彼は足を止め、振り向いた。
「あ…ありがとう、ございました。…助かりました」
普段は滅多に下げない頭を下げる。お礼をすることなんて滅多にないから、きちんとできてるか不安だ。
「…いいよ。そんな金額じゃない」
あたしが手持ちのお金で払えなかった金額をサラリと流す。その言葉や彼の身なりから、結構なお金持ちであることがわかった。
「あの…でも、お金、返さなきゃ…」
「いいよ、そんなの」
「いやでも…、そんな、せめてお礼でも…」
今思うと、どうにかして彼を繋ぎ止めたかったのかもしれない。そう思うと、その時からあたしは彼のことが気になってたのだろう。
好きになってたと言っても、過言じゃないと思うけど。