チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

「…何で」
「え?」
「何であたしに前の恋人がいるってわかったの?」

冷や汗。早鐘の様に心臓が打つ。

「ま…前に、春哉さんの話した時、断る理由教えてくれなかったじゃないですか。だから…その、直感で、前の恋が関係してるのかなぁって…」

すみません、でしゃばりすぎですよね、と顔を下げた。

バカだ、あたし。間抜けにも程がある。宮川さん、何か気付いたかも。

自己嫌悪に陥っているあたしの前で、ふいに宮川さんが笑った。

「凄い洞察力」

あたしが顔を上げると、宮川さんは「なぁんだ、そんなことだったんだ」と軽く言った。

「てっきり春哉のこと、好きなのかと思っちゃった」
「え!?」
「あたしの勘違いだったみたいね。よかった」

『よかった』

そんな言葉に機敏に反応してしまうのは、やっぱりマモルの事を知っているからだろうか。

「亜弥ちゃんは、彼氏は?」

一番痛い質問がきた。でもあたしも聞いた以上、答えなきゃいけない。

「彼氏っていうか…好きな人なら、います」

嘘じゃなかった。佐倉さんを彼氏扱いする方が、嘘に思えたから。

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