チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
…次の日の夜、さっそく知恵に言われた春樹に家まで送ってもらうことになった。
まだ9時前なのに、知恵はなかなか心配性だ。
「っていうか、あたしより知恵送ってあげなきゃ」
「知恵は兄貴が迎えに来てくれるし。どうせ兄貴んちに行くんだし」
「へぇ~、ラブラブですこと」
うらやましいだろと笑う春樹に、バーカと笑うあたし。
でも本当は、羨ましかった。
信頼しあってる春樹と知恵が。
あたしと佐倉さんには、天地がひっくり返ってもありえない関係。
「ストーカーって、どんな奴?」
「わかんない。見たことはないもん。気配とか、足音だけ」
「ふーん。気味悪ぃな」
確かに気味は悪いけど。でも知恵がこんなに心配するとは思わなかった。
なんだか少し申し訳ない。
「でもさ、亜弥と知恵、すげぇ仲いいよな」
ふいに春樹が言った。
「そう?」
「うん。焼きもちやくくらい」
「あはは、何それ」
「まじで。あいつ何だかんだ、いっつも亜弥の話してるもん。隠し事とかないだろ?」
そうだね。流れるように言ったが、表情は固い。今が夜でよかった。戸惑った顔、見られずにすむ。
…ないわけじゃない。絶対にバレたくない秘密がある。
援助交際、してること。