チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

……………

あの日の事は、誰にも言わなかった。

何事もなかったかの様な穏やかな日々が通りすぎていく。

本当は誰かに言おうと思っていた。下手したら、警察に相談に行こうとも。それ程あの日の夜は怖かったのだ。

でもそれから一度も、あのストーカーはあたしの前に姿を現すことはなかった。

それどころか、嫌な視線もつけられてる感覚も、何もなくなったのだ。

拍子抜け。というのだろうか。

あんな脅し文句を言われてどうなることかと思っていたのに、以外にもあたしの周りは穏やかになっていったのだ。

このまま何も起こらなければいい。

何もなかったかのように。あれは間違いだったんだと思えるくらいに。

そう望んだのも束の間、結局はそれは願望だったのだと思い知ることとなった。


…あの夜から2週間近くたったある日。

そのメールは、あまりにも自然にあたしの携帯にたどり着いた。

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