チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~


…荷物を持って、家を出た。

カチャリと鍵のかかる音が、あたしの心にも鍵をかける。

お姉ちゃんに会ったのは、いつぶりだったろう。

家にいても、お互い極力顔を合わせない様にしていた。

あたしはあたしで気まずいし、何よりお姉ちゃんは、あたしの事が嫌いだ。

世界一。

彼女の口から聞かされてきた言葉は、全てが否定だった。

何であんたなんかが妹なの。

人前であたしのこと姉だなんて言わないで。

妹なんていらなかった。あたし1人で十分なのに。


お母さんは、何であんたなんか生んだんだろう。


もう何度も聞かされすぎて、傷つくこともなかったけど。

久しぶりに見た彼女は、前より少しだけ大人びて、そして綺麗になっていた。

綺麗で、スタイルがよくて、頭がよくて、母親に愛されてて。

それだけ揃ってれば十分でしょ。わざわざあたしを否定しなくても。

でもそれだけ完璧だからこそ、あたしの存在が邪魔だったのかもしれない。

彼女が今日着ていたロングシャツ。あの色違いを、あたしは持っていた。

背伸びして買ったブランドの服。

あたしより彼女の方が、やっぱり数倍似合ってた。

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