チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
夜の街の雑踏が響くのは左耳。右耳は、いやに静かだった。
電話の向こうから、小さな声が聞こえる。
『…サクラ?』
男の人の声だった。ぼんやりとした思考回路の中、援助交際相手かな、と思う。それくらいしか、あたしを"サクラ"と呼ぶ人なんかいない。
「うん」
誰ですか?、と聞こうとした。その前に電話の向こう側から声が届く。
『ごめん…俺、自分勝手で。でも…でも俺、やっぱりサクラが好きなんだ。』
固まる。何言ってるの?サクラが好き?こんなこと言う人なんていたっけ?
『ちゃんと…ちゃんと、話すから。話すから、だから…もう一度だけ、会ってくれないかな。もし会ってくれるなら…明日11時に、いつもの公園で待ってる。…待ってるから』
プツッと切れた。ツーツーツーと無機質な音。頭の中に雑踏が戻ってきた。
同時に、酔いがすうっと醒めるのがわかる。
…今のは確実に、間違い電話だ。
電話の向こうから、小さな声が聞こえる。
『…サクラ?』
男の人の声だった。ぼんやりとした思考回路の中、援助交際相手かな、と思う。それくらいしか、あたしを"サクラ"と呼ぶ人なんかいない。
「うん」
誰ですか?、と聞こうとした。その前に電話の向こう側から声が届く。
『ごめん…俺、自分勝手で。でも…でも俺、やっぱりサクラが好きなんだ。』
固まる。何言ってるの?サクラが好き?こんなこと言う人なんていたっけ?
『ちゃんと…ちゃんと、話すから。話すから、だから…もう一度だけ、会ってくれないかな。もし会ってくれるなら…明日11時に、いつもの公園で待ってる。…待ってるから』
プツッと切れた。ツーツーツーと無機質な音。頭の中に雑踏が戻ってきた。
同時に、酔いがすうっと醒めるのがわかる。
…今のは確実に、間違い電話だ。