チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「…亜弥」
堪り兼ねた知恵が口を開いた。あたしはそんな知恵を見ることができない。
「…何か、あった?佐倉さんと…」
「別に、何もないよ」
「じゃあ、何で…」
「何で違う人といたかって、そう言いたいの?」
口ごもっている知恵に向かって言った。吐き捨てたと言った方が正しいかも。
「…あの人、誰?」
多分今、二人が一番聞きたい事だろう。そしてあたしが、一番言いたくなかった事。
でも今更、もうどうでもいい。
「援交」
「…え?」
「わかるでしょ、あの年代のサラリーマンと一緒にいたら。そんなの援交しかないじゃん」
まさか父親とでも思った?吐き捨てる様に笑って言う。
わざと、きつい言葉を選んでいる様だ。無意識に。
「…なんで…そんな…だって亜弥、一度もそんな事言ってくれなかったじゃん」
「援交してるって?」
皮肉な笑いが口をつく。
「言えると思う?言えるわけないでしょ、そんな事」
視線の先は、マックの入り口辺りだった。二人の顔は、絶対見れない。
「あたしが何でも知恵に話してるなんて、そんなこと思わないでよね」
言ってしまった。
多分、一番傷つける言葉。
そして、一番傷つく言葉を。
「知恵には関係ないし」