チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

そう思うとそのオムニバスを聞いているのもなんだかバカらしくなって、途中で辞めた。

軽く溜め息をついて、ヘッドフォンを外す。

その耳に、ふいにあの旋律が入り込んできた。

試聴してたから気付かなかった。
店内に流れてたヒットチャートは、いつのまにか姿を消している。


その代わりに流れていたのは、ショパンだった。


思わず固まる。そして、聞き入っている自分がいた。

店先に改めて目をやると、ショパンのCDが山積みされている。
その後ろの立て看板には、今一番ヒットしている映画のポスターがあった。そうか、あの映画で使われてる曲が、ショパンだったんだ。

ノクターンじゃなかった。題名は覚えてないけど、それでもあたしが買ったショパンのCDに入っている曲だということはわかる。

ふいに、胸が締め付けられた。

さっきのオムニバスを聞いた時よりも、強く。

耐えられなくなって、あたしは思わず店から出た。

それでも頭に残るあのメロディー。

優しくて、そして、切ない。

頭の中で流れる曲は、次第にマモルのバイオリンへと変わっていった。

それがより一層、あたしを切なくさせた。

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