チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

新幹線のチケット代は、あのバイト代を使った。

一番有効な使い道。
"サクラ"さんが、あたし達を会わせてくれる。

そんなことを、小さく思った。


…マモルは、どう思うだろう。

本当のあたしと会って、本当のあたしを知って。

佐倉さんと会うとき程じゃないけど、最低限のおしゃれはしたつもりだった。

適当なホテルでシャワーを浴びて、ちゃんと髪も巻いて。
持っていた服の中であたしが一番気に入っていた、ストライプのチュニックに、白カプリを合わせる。
ピンクのパンプスに、カゴバッグ。

お金を使うために買ったものは何一つ持たなかった。全部、東京のコインロッカーに置いて来た。

これがあたし。

今見せれる、最低のライン。


新幹線が進む。

少しずつ、マモルに近づいていく。

新幹線の走る音が、携帯の呼び出し音とリンクした。



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