チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
…新幹線独特の音楽が耳に届いた。
うっすらと目を開ける。窓に視線をずらすと、見たことのない街が広がっていた。
表示される場所を見る。マモルのいる場所まで、あと一駅だ。
軽く背中を伸ばして、席に深く座り直した。
…結構長い間寝てたみたい。
変な体制で寝ていたからか、少し首が痛かった。
首筋を擦りながら、ぼんやりと夢を思い返す。
マモルの顔は、思い出せなかった。
『佐倉さんのことは、どう思ってるの?』
…どういう意味だろう。
あれは、あたしの中にいるあたしからの言葉?
佐倉さんの事は好きだ。
今でもまだ、想うだけで胸が苦しい。
じゃあ何であたしは、マモルにあんな事を聞いてしまったのだろう。
『あたしのこと、どう思ってる?』
夢の中のあたしは、マモルに何を期待していたのだろう。
何て答えて欲しかったんだろう。
複雑な感情が、胸をかきむしる。
振り払おうとして軽く目を閉じたが、もう夢には向かえなかった。
ただ刻々と、時間が過ぎていくだけで。
トンネルに入ると、つんと耳が遠くなった。