チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
心臓を鷲掴みにされたような苦しさがあたしを襲い、どうしようもなくなってあたしはマモルを抱き締めた。

一瞬マモルは驚いて、そしてぎこちない仕草であたしの髪を撫でる。


「さらさら…綺麗な髪だ」


手のひらで、指の先で、マモルはあたしを見た。


「…ごめんね、チェリ。君が…見えなくて」

必死に首を振った。
その振動がマモルに伝わり、マモルは小さく微笑んだ。

こんな時の笑顔ですら、彼は優しくて。


…どうして?

神様はどうして、この人を選んだの?

こんなに優しいマモルから、


「…どうして?」



どうして光を、奪ったの?



あたしの小さな呟きに、マモルは優しい手のひらで答える。

あたしはただ、マモルを抱き締めて泣くしかなかった。


どうして?

どうしてマモルなの?





…彼は、目が見えなかったんだ。




< 184 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop