チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
頭痛どころじゃない。すっと血の気が引いた。
「す、すみませんっ!夜中に…」
「いや、いいよ。こんなの慣れてるから」
爽やかに笑う彼は、屍の様な皆を華麗に跨ぎ玄関に向かった。
「鍵は春樹が持ってるから、帰るなら春樹起こしてからにしてね。俺、今から大学だから」
「…はい」
「君達も授業のはずなんだけど…まぁいいか。俺が言えた立場じゃないしな」
ははっと笑いながら、「冷蔵庫にあるもんなら適当に食べていいから」となんとも親切な言葉を残して行ってしまった。
ドアの閉まる音と彼が階段を降りる音を聞きながら、春樹の兄とは思えない程できた人だなぁとしみじみ思った。