チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

歩き出す道



……………

「亜弥ー!」

振り返ると、教室の入り口で知恵が手を振っていた。
今日に合わせて染め直した黒髪が意外にも似合ってる。

「集合場所、いつものファミレスだって!」
「ファミレス?」
「経費削減らしいよ~。せっかくの卒業パーティーなんだから、どっか貸しきるとかできなかったのかな」

少し口を尖らせて知恵が言った。幹事は春樹だから、多分彼は散々知恵に文句を言われたんだろう。

そんな二人を想像したらおかしくて、少し吹き出した。

「え?何~?」
「いや、何でもない。あたし後から合流するよ。知恵先行ってて」
「わかった!」

入り口で大きく両手で丸を作り、知恵は走って行った。

そんな知恵を笑顔で見送って、視線を元に戻す。


教室の窓から見える、満開の桜達。

< 207 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop