チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
電話の向こう
……………
久しぶりに学校に行った。気付いたらあたしの席は変わってて、窓際の一番後ろになっていた。
丁度いい。はしっこが一番楽だ。
「亜弥、こないだから何見てんの?」
前の席に座った知恵があたしをのぞきこむ。知恵が座ってる席はもちろん彼女の席なんかじゃなく、本当にその席のクラスメイトが戸惑った様に他の友達に話しかけていた。
まぁいいか。
「…別にー」
「電話番号でしょ?誰々?佐倉さんじゃないよね?」
違うけど…と言いながら、そういえば最近佐倉さんから連絡がないなと思った。
別に今に始まったことじゃない。1ヶ月丸々連絡がないことだってある。
でもあたしからは、連絡はできなかった。
多分したとしても佐倉さんは怒らないし、きっとうまく誤魔化すはずで。
でも、どうしても連絡は出来なかった。
「佐倉さんじゃないなら誰よ?」
「や…間違い電話…」
間違い電話?知恵の声を聞きながら、ぼんやり思った。
彼も必死だったのかもしれない。あたしが佐倉さんに連絡できない様に、彼も"サクラ"さんに必死の思いで連絡したのかも。
でもその電話が通じたのは、あたしみたいな女のとこで。