チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
トンッと壁に背をもたれる。
どこからか聞こえてくる湘南乃風。
「…純恋歌」
はっと笑いが口についた。
程遠いな。純恋歌なんて。
ふいに携帯に目を落とした。着信履歴を見る。
佐倉さんの下にある、登録のしてない2連続の番号。
ふいに、思った。
電話、してみようと。
躊躇いもなく通話ボタンを押す。
なんだか妙に落ち着いていた。
聞いてみたかったのかもしれない。彼と"サクラ"さんがどうなったのか。
野次馬的精神とは少し違う。ただ何だか、聞いてみたい気がしたのだ。
微かに聞こえる純恋歌。
電話の向こうの彼は、どういう気持ちで聞くだろう。
彼と"サクラ"さんは、純恋歌が似合う恋だったのかな。
あたしとはやっぱり、違うのかな。