チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「連絡…とらないんですか?」
でしゃばってるかな、と思ったが、聞いてみる。
何でかな、いつもより思考回路が単純になってる気がした。
それは多分、彼の優しそうな口調のせいで。
『いや…連絡しようとしても、番号がわからないんです』
「あ…あたしの番号と…」
…そうだった。彼は間違えてあたしに電話をしてきた。しかも、二回も。
ということは、"サクラ"さんの電話番号とあたしの電話番号を間違えてるわけで。
『間抜けなんですけどね。見間違えてしまったみたいで…』
「もう…わからないんですか?その…番号のメモとか、アドレスとか…」
『…残念ながら』
電話の向こうで、彼が俯いて苦笑いしている様な気がした。
二人がどういう関係かはわからなかったけど、彼が"サクラ"さんを今でも好きなことはよくわかる。
「彼女…サクラさんとは、もう会えないんですか…?」
『…いや…』
しばらく沈黙があった。あたしは黙って待つ。
『…会わない方が、いいんです。だから…サクラさんが気にすることは何もないですよ。』
わざわざすみませんと、礼儀正しい声がした。
『会わない方がいい』
その言葉に、胸が痛む。