チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
「あの…」
あたしは思いきって口を開く。『はい?』と優しそうな声が返ってきた。
「あの…会えませんか?」
『…え?』
「気にしなくていいって言ってくれたけど…やっぱりなんか、申し訳なくて…。だから、何か奢らせて下さい。」
言った後、これじゃ新手の逆ナンだなと思った。多分戸惑ってる彼に、急いで訂正を入れる。
「あの、違くて…別に、下心とかそんなん全然、ありませんから!あたしも好きな人いるし、だからそんな警戒せずに…」
必死に言うあたしに、携帯の向こうから吹き出す声が聞こえた。
思わず顔が赤くなる。
「…すみません、怪しすぎですよね」
『いや…すみません、笑い…』
どこかのツボに入ったのか、彼は笑い続けた。あたしはどうすればいいかわからずに頭をかく。
申し訳ないという気持ちも、嘘じゃなかった。でもどこかで、この人と話してみたいと思っているのも真実で。
優しそうな声。
"サクラ"さんに想いを告げる真剣な声。
たまに聞こえる、小さな苦笑。
それらは、あたしを落ち着かせる作用があった。
嘘だと思うかもしれないけど、ホントに。