チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
やがてようやく笑い終えた彼は、ゆっくりと言った。
『多分…会うのは少し、難しいと思いますよ』
「え…何でですか?」
少しだけ意外だった。彼ならきっと、いいと言ってくれるとどこかで思ってたのだ。
自意識過剰もいいとこだ。
『サクラさん…今どこですか?』
「え?…っと、渋谷、かな。うん、渋谷のカラオケ」
無駄に窓の外を見て確認する。確認しなくても、ここが渋谷だということくらい解りきってたはずなのに。
『やっぱり、東京ですね。』
「え?」
『俺、東京じゃないんです。もっと田舎』
「あ…そっか、そうですよね」
自分の短絡的な性格が恥ずかしかった。
何故か無意識に、彼も東京にいると思ってしまっていた。というより、東京が基本だって思ってる。
生まれも育ちも東京のあたし。何もかもが東京にあると思ってしまっていた。
東京以外にも、世界はあるのに。