チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~
手の甲で涙を拭った時、マモルが携帯の向こうで口を開いた。
『…チェリは』
あたしは耳をすます。
『チェリは、汚くなんかない。汚れてなんか、ないよ』
それがあまりにも優しい声だったから、今拭った涙が再び頬を伝う。
『本当に汚れてる人は、自分が汚れてるなんて気付かない。汚れが広すぎて、自分じゃ見えないんだ』
諭す様に呟くマモル。あたしはしゃくりあげながら、必死に携帯を握りしめた。
『誰でも汚れはあるよ。完璧な人なんていない。自分の汚れが見えてる人は…汚くなんか、ないよ。』
マモルが携帯の向こうで、微笑んだ気がした。優しい微笑み。涙が止まらない。
『大丈夫。チェリは綺麗だよ』
あたしは携帯を耳に当てたまま、うずくまって泣いた。
電話口の向こうでマモルは、『泣くなって』と笑った。優しい、笑いだった。
「マモ、ル…」
涙の合間に必死に呟く。優しい声で、『ん?』と呟くマモル。
「あり、がと」
多分、いや絶対、マモルは微笑んでた。あたしにはわかる。マモルの優しさが、わかる。
ありがと、マモル。
ありがとう。