チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

「…昨日マモルは、この事を伝えたくて電話したの?」

あたしの質問に、マモルは小さく笑った。あたしも同じように笑い、そして、言った。

「ありがとう、マモル。最高の誕生日プレゼントだよ」






…昨日の丘に戻ると、佐倉さんの車がそのままあった。

あたしは驚いたけど、でも同時に安心する。

窓から覗くと、運転席で佐倉さんが寝てた。腕を組んで、少し頭を垂らして。

愛しさで胸がいっぱいになる。

無駄だと思ってドアを開けるが、それはあまりにもあっさり開いた。

驚きと同時に、佐倉さんが開けておいてくれたのだと思った。

多分、あたしが帰ってくると思って。

「…帰ってこなかったらどうするつもりだったの?」

助手席に横を向いて座り、佐倉さんに話しかける。眠った佐倉さんは、微動だにしない。

「鍵もかけないで…無防備すぎだよ、バカ」

そっと髪を撫でた。佐倉さんの寝顔を見るのは初めてだ。

愛しくて、切なくて、あたしは小さく頬にキスをする。

< 85 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop