【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
見た瞬間、目を見開いた。

「……広い。」

思わず本音が漏れた。

私の住む1DKアパートとは

比べものにならないほど

何倍も広いリビングに

呆気にとられそうなほど。

内側のカーテンはかかっているけど

窓も大きくて

微かに夜景も見えた。

「……凄い。」

と、私は呟いた。

「…そうか?
そんな大した事はないぞ。」

エアコンと加湿器を付け

私のコートをかけてくれたその人は

「…野村さん、こっちに来て。」

と、私のバッグを持って

バスルームへ連れて行った。

「…えっ?あの…。」

「…寒かっただろ?
泣き腫らして顔も痛いだろうから
先にシャワーを浴びるといい。
はい、君のバッグだ。」

と、私に渡した氷室部長は

バスルームの収納棚から

バスタオルとフェイスタオルを

取り出して、近くに備え付けられた

洗濯機の上に置くと

「…バスタオルとタオルは
これを使うといい。
ドライヤーはここ。
シャンプーやリンスや
ボディーソープは一応揃ってる。

湯はりして、浴槽に入ってもいいぞ。

使ったら、洗濯機の中に入れておいて。
じゃあ、ごゆっくり。
済んだらまたリビング戻って来いよ。」

そう言って

私の頭を“ポンポン”として

優しく微笑みを浮かべた

氷室部長はリビングへ戻っていった。

………。


満君のマンションを飛び出して

行き慣れない駅で偶然氷室部長に会い

部長に連れられて車に乗って

氷室部長のマンションに足を踏み入れ

今バスルームでシャワーまで…。

予想つかない展開に再び戸惑ってきた。

私、今ここにいていいのかな…。

あっ、でも……。

今はボーっとしててはいけない。

待たせたら不審がられるし怒られる。


私はバッグから

ポーチなどを取り出した。
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