【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
優しく微笑みながら

私に缶を渡す氷室部長。

良く見ると髪型は

会社にいる時より無造作な雰囲気で

前髪が長くて切れ長の目が隠れるか

隠れないかの際どさが

会社での『部長』とはまた違う

オトコの色気を漂わせ

さっきは気づかなかったけど

初めて見るお風呂上がりの部長の姿に

今になって

なぜか“ドキッ”としてしまった。

本当に特殊な威力をもつと

言われているくらい

不思議な魅力がこの人にはある。


なぜ、この人はバツイチなのか

皆が不思議がるのがわかった気がした。

「…どうかしたか?大丈夫か?」

固まってる私を見て

氷室部長が首を傾げた。

「…あっ、いえ!何でも……。
すいません、いただきます。」

慌てて私は缶を受け取ると

プルタブを開けた。

「「…乾杯。」」

お互いの缶を軽く合わせて

一口含むと

レモンの酸味が口に広がった。

「あっ、美味しい。」

スッキリして飲みやすい。

それに、喉にシュワッとくる。

ふう…。


今日は凄く泣いた。

泣き過ぎた。

全身の水分が抜けてしまうんじゃ

ないかと思うくらい泣いたから

カラダに染み入って

余計に美味しく感じた。


半分以上飲んだ頃になって

「…本当は
ビールを飲んでも良かったけど
アルコールが入った状態で
聞いちゃいけないと思ったから。」

「…えっ!?」

氷室部長の言葉に

私は視線を横に向けた。

部長はグイッと飲み切って

缶を前にあるミニテーブルに置くと

私に視線を向け直して、口を開いた。

「…野村さん。
そろそろ君の話を聞きたい。
詳しく話して貰えないかな?
俺とさっきあの駅で会うまでの間に
君と笠置の間で何があったのかを…。」


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