【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜

私の足元に胡座座りをした氷室部長は

救急箱から消毒液を取り出し

ティッシュに染み込ませると

「…少し我慢しろよ。」

そう言って

私の右の踵をそっと掴むと

患部をそっと消毒してくれた。

「………っ。」

ずっと気を張っていたのか

今になって、痛かった事を実感した。

でも、それ以上に氷室部長が

私の足の消毒までしている事が

何だか信じられなくて

緊張感が背中に走った。

「少し痣っぽくなってるところもある。
相当がむしゃらに走ったんだな…。」

そう呟くように氷室部長は

反対側にもまわって

左の踵にも同様の事をしながら

私の顔を見上げると

「…笠置と豊島の件は俺に任せとけ。
決して野村さんを絶望的にさせないし
泣き寝入りさせないから。」

と、言い出した。

少し低く、怒りを含んだその声に

「…それって…どう言う事…。」

首を傾げながらも

少し緊張しながら聞き返すと

「…そのままの意味だ。
俺は…アイツらを許さない。
裏切られた者がどんなに辛く
苦しいものか…あいつらは
わかっていない。
…とにかく、俺に任せとけ。
野村さんを助けてやる。
だから、絶望的にはなるな。
それと、野村さんは笠置と豊島に
絶対電話はするな…いいな?」

患部に絆創膏を貼って

救急箱を仕舞いながら

氷室部長は私に

「…俺に任せとけばいい…いいな?」

と、私に視線を向けた。

その鋭い瞳に

カラダが硬直しそうになったが

コクンコクンと頷くと

「…わかればいい。いいか?
絶対だぞ。」

と、氷室部長は私の元に戻ると

隣に座り、ジッと私を見た。

前髪から覗く切れ長の目。

でも、さっきとは変わって

優しい表情に戻った氷室部長は

私を見下ろしながら

私の肩を優しく“ポンポン”とした。



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