【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
「…帰さない。帰す気ない。」

そう耳元で囁いた氷室部長は

戸惑う私をギュッと抱き締めた。

「………!!」

…なっ…何!?

突然の事に思考が追いつかない。

私、今…氷室部長に抱き締められてる?

氷室部長から香る匂い。

さっきの背中とは違う密着感に

ドキドキと心臓が鳴り続ける。


「氷室部長…どうして?
あの……離して下さい。
私…あの…帰らなくちゃ。」

氷室部長に抱き締められている

この腕から離れようとした私を

氷室部長は

「…離すもんか。」

と、さらに強く抱き締めた。

「……えっ!?」

「…ダメだ。絶対離さない…。
絶対に帰さない。
…なあ、野村さん。
いつになったら俺の事を
恩人以上に見てくれるんだ?
いつになったら俺の事を
一人の男として見てくれるんだ?
俺の気持ちに気づいてくれないのか?」

氷室部長はそう言って

少しチカラを緩めながら私を見つめた。

「……どう言う事…ですか?」

…“いつになったら俺の事を
恩人以上に見てくれるんだ?”って!?


…“いつになったら俺の事を
一人の男として見てくれるんだ?”
って!?

…“そろそろ…俺の気持ちに
気づいてくれないのか”って!?


これは告白をされたって事!?

状況が上手くのみこめない。

私を見つめる氷室部長の瞳は

逸らす事など許されないかのように

強く鋭く私を捉えられていた。

「…氷室部長…?あの……。」

戸惑いが収まらない私を見た部長は

「…知ってると思うが
俺は『バツイチ』だ。
でも、俺は…もうずっと前から
野村羽美花…君が好きだったんだ。」

「…えっ!?…氷室ぶちょ…んんっ。」

話そうとした私の言葉は

封じ込められてしまった。

「…んっ。」

氷室部長からの突然の告白に

驚く間もなく

私は噛み付くように唇を塞がれた。













< 118 / 320 >

この作品をシェア

pagetop