【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
1時間は長いと思っていたけど

意外と早く時間が経とうとしていた。

雑貨や調理器具をじっくり見て

買おうか迷っていたのを購入して

約束の場所へと向かう前に

お手洗いを済ませて

近くにあるフリースペースに座って

携帯をチェックした。

やっぱり…。

満君からの着信があった。

私は携帯を閉じて

ポシェットに仕舞った。

今の時間はフリースペースの利用も

ほとんどいなくて静かだった。

今日はクリスマスイブで土曜日だから

カップル、家族連れがやっぱり多い。

私と氷室部長はどう言う目で

見られてるのかなぁ…。

恋人同士に見えてるのかなぁ…。

一緒に歩いていた時

常に部長を通り行く女性達が

チラチラ見ていた。

オーラがあるし、イケメンだし

若くして営業部長だし

会社でも人気ある人だから当たり前か。

そんな人とこんな形で

クリスマスイブを迎えるなんて…。

部長はモテるのに

私のどこが良かったのかな?

満君の事しか頭になかった

私のどこを好きになったのかな?

駅で初めて会った時の

しゃがみ込んで、真っ青だったはずの

私が美しかったなんて言ってたけど

……恥ずかしいな。

でも、この先も部長は

『私を好きだ』と言ってくれるのかな。

満君を完全に忘れさせてくれるのかな。

私を捨てずにいてくれるのかな。

今はこんな事を考えても仕方ないか。

…あっ、思い出した。

お正月の事…満君と私の実家に行く話。

両親や兄は満君を迎え入れるつもり

万全だっただけに

浮気されて別れたなんて言ったら

どんな反応するかな…。

その時、携帯のマナーモードが鳴った。

『今、どこにいる?』

氷室部長からのメールだ。

私は今いる場所を教えた上で

『今から待ち合わせ場所へ行きます。』

と、返信して携帯を仕舞った。

さて…待ち合わせ場所に行こうかなと

立ち上がったその時

「…野村さん?」

近くで私を呼ぶ声が聞こえた。

「………。」

視界に映ったその人は

…豊島亜由子だった。















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